輪王寺

栃木県日光市山内にある天台宗の門跡寺院。766年（天平神護2）勝道上人により開創された四本竜寺に始まる。810年（弘仁1）に満願寺の号を受け、820年には空海、848年（嘉祥1）には円仁がきて諸堂が建立され、山内は大いに栄えたと伝えられる。のちやや衰退したが、源頼朝の寺領の寄進や北条時頼の帰信など鎌倉幕府の庇護を受け、1308年（延慶1）には仁澄親王が当山第27世となり、皇室との関係も密接となった。最盛時には僧坊300余といわれたが、足利尊氏の兵乱に巻き込まれ、さらに豊臣秀吉による寺領没収などで、大坊が9か寺残されるのみとなった。

　慶長年間（1596～1615）天海が当山に入って以来ふたたび興隆し、徳川家康の帰依も厚く寺領2000余石を受けた。家康没後、秀忠は父家康の霊廟をつくり、1617年（元和3）久能山から霊柩を迎えて改葬し、東照大権現とした。以来徳川幕府と特別な関係を保ち、諸大名の寄進も行われて、家光の東照宮改築をはじめ諸堂がしだいに完備した。1655年（明暦1）には輪王寺の号を受け、後水尾天皇の皇子守澄法親王が初代の門跡となり、寛永寺門跡、天台座主をも兼ね、明治に至るまで歴代法親王は管領宮として仏教界に君臨した。1871年（明治4）神仏分離令で、日光東照宮、二荒山神社が独立し、寺は満願寺の旧名を称したが、1885年日光山輪王寺門跡号を復活した。以後、三仏堂（国重文）を本堂とする。家光の霊を祀る大猷院霊廟の本殿・相の間・拝殿の3棟が国宝に、同じく大猷院霊廟の唐門・皇嘉門など19棟、また常行堂、慈眼堂、特徴ある相輪橖などが国重要文化財に指定されている。1961年（昭和36）焼失した鳴竜で有名な薬師堂は68年復興された。寺宝には『大般涅槃経集解』（国宝）、東照権現像八幅、千手観音像（ともに国重文）などや工芸品、古書を多く蔵する。4月2日の強飯(ごうはん)式、5月17日の延年の舞は有名。