真福寺

嘉禎2年（1236年）頃、地元住民によって尾張国中島郡長岡庄大須（現・羽島市桑原町大須）に中島観音堂と呼ばれる堂が建立されたのがはじまりとされる。
元亨4年（1324年）、後醍醐天皇が現在地の近辺に北野天満宮を造営すると、1333年（元弘3年）には対岸の真光寺に入っていた能信上人に観音堂も守をさせ、そのうちに天満宮の別当寺として観音堂を北野山真福寺（のちに北野山真福寺寶生院と改名）と改めた。
正平5年（1350年）、南朝・後村上天皇により勅願寺に任じられ、加増された寺領に伽藍も造営された。また、摂津国四天王寺の聖観世音菩薩を移して本尊とした。
建徳2年（応安4年、1371年）から翌年にかけて、僧・賢瑜によって『古事記』3帖が書写された。これは現在に伝わる最も古い『古事記』の写本で、真福寺本と呼ばれ国宝に指定されている。
3世・任瑜法親王の時には寺領1万石となり、伊勢・美濃・尾張・三河・遠江・信濃6か国の真言宗寺院を全て末寺としている。
戦国時代に入ると末寺も減って衰退するが、織田信長により寺領500石が寄進され再興されている。
その後、木曽川や長良川の氾濫で移転を繰り返すとともに衰退していく。慶長10年（1605年）の洪水ではついに本尊と貴重な書物類以外をほとんど失う。7年後、真福寺に貴重な書物などが残ることを知った徳川家康は、元和元年（1615年）には天海とともに蔵経を見た。家康の命を受けた犬山城主・成瀬正成によって真福寺は古事記の写本や古典籍、絵画のほとんどとともに名古屋城下へ移転され再興される。地名「大須」も移動先につけられた。
移転後には地域住民が、同名（院号と寺号の順が違うのみ）の寺院・北野山宝生院真福寺を跡地に建てた。真福寺は幾たびかの洪水で荒廃するが、地元の人々によって移転と再興が続けられ、昭和39年（1964年）には現在地に移転した。