中郷山 等覚寺

　當山は、宗祖日蓮大聖人滅後七年の、正応元年（1288年）に宗祖の御弟子・治部阿蘭梨日位上人の開基による富士川以西、本宗最初の道場といわれている旧跡であります。
　日位上人の御祖母・妙位尼公は深く宗祖に帰依し、度々身延山に登詣して米・野菜等の供物を贈られました。弘安二年（1278年）戌寅の年、御孫日位上人を身延に使し、御盆の供養について大聖人に御尋ねになられました。宗祖は、その篤志に深く感じられ建治三年（1279年）七月十三日に御本尊ならびに「孟蘭盆御書」を御染筆され、妙位尼公に授与されました。
　是れが本宗に「孟蘭盆御書」として伝わり、當山が「孟蘭盆精舎」と云われる所以であります。その後正応元年（1288年）二月十三日・日位上人三十二才の時、當所四十九院に萱葺の持佛堂及び小庵を建立し妙法の弘道に心血を注がれました。本年は小庵を建立されてから719年に当たります。これが等覚寺の基因であります。
　日位上人在住すること十年・四十二才にして寺を府中宮ヶ崎に移し、十年後さらに池田に移られ本覚寺を開創しました。上人は、この間・各地を遊説して本化の弘教に務められました。特に静岡市清水区村松・海長寺を天台宗から文永九年（1272年）日蓮宗に改宗し、数年居られましたが寺を法弟・日賢上人に譲られた後、池田に帰って文保二年（1318年）四月二十三日・世壽六十二才で入寂遊ばされました。
　當山は永禄年中、甲州・武田信玄公との兵乱のおり、堂宇、古文書・古証文等を焼失しましたので、現在地に寺を移転再建し今日に到っております。歴史の変轉の中に盛衰がありましたが、寛文八年（1668年）了治・日覧上人が再興し以来、法燈連綿として参りました。しかし明治の変革の際、檀信徒がこぞって神道に転じ、寺の維持の途を失うに至りましたが、その折り斉藤日順上人が住職となり檀信徒の復帰を促し、寺の維持に心血を注ぎました。
　第三十三世・深澤玄察上人は先代の意志を継承し、宗祖六百五十遠忌を期して本堂を建立し昭和十七年（1942年）法燈を継承し、檀信徒と計り山門内外の整備を致しました。次で第三十四世・深澤玄誠上人は客殿増築等を行うと共に、檀信徒・未信徒の教化を弘く行い、昭和五十六年（1981年）宗祖七百遠忌に日蓮大聖人立像を建立、開創七百年事業として供養塔を建立し、檀家各家先祖代々の菩提を弔うと共に、記念法要を厳修致しました。