清瀧山　金蔵院 (佐野市仙波町)

当山は、一四九四年(明応三年)弘基上人の開かれた山で、安置するご本尊は、不動明王である。
当寺は唐沢城主佐野家累代の祈願所で、始め寺家坊と称して、仙波寺家入を院の領域とし、諸家の幸福を祈願した。 後土御門天皇の明応三年、 今より五一〇年前、第一世の弘基大徳が、此の地に移り、本院を建立し、 寺院名を、清瀧山金蔵院聖法寺と称した。なお末寺十八か寺を所有し、唐沢城主から、寺領として、六十貫を給わった。応長年間に城主は、佐野了伯天徳寺と号して、当寺に老隠した。現在の山門は一六〇〇年(慶長五年) 当時に建立されたものである。浄月の第二十一世寛政三年三月火災にあい、 建物は灰燼に帰した。第二十二世慶海は、法主となり、諸人の信望をあつめて、堂宇を再建した。それ以後、数代を経て、第三十三世の慶照は、王政維新の乱世にも拘わらず、能く、当寺を守り、明治の聖代を迎えた。世は移り第三十四世の啓運が寺を継ぎ、当寺の檀徒の信望をあつめたが、明治三十五年、歿後は、当山の経済は、貧しくなり、建物は退廃した。この現状を憂いていた檀徒は相諮り、大正元年、当時、京都の総本山智積院勸学院にて勉学修学中であった垣内覚雄を、第三十五世として招請した。 覚雄住職は、寺院の興隆と一山の整備を年頭に身を挺して精励すること十数年、やがて面目を一新し、崇敬に相応する寺院とした。ところが昭和四年 四月仙波に火災が起こり、その類焼に遇い本堂、庫裡ともに灰燼に帰してしまった。住職は、直ちに、寺領の大木を伐採して、これに充当し復興 に心魂を傾け、また檀徒も祖先の霊に捧げる誠心を物質に現し、相共に一体となって再建に着手した。翌五年、現在の本堂は、落慶を見るに至り、一山の堂宇は完成した。やがて、太平洋戦争となり敗戦の後、寺院に関する法令制度の改革がなされ、寺領の解放となり、法城維持に困難を窮めたが、時世に応ずる檀徒の理解と奉賛は癒々高揚された。第三十五世垣内覚雄僧正は、昭和三十五年四月七十九才で逝去される。 現住職垣内智洋は当時学生であった為、直ちに出流山満願寺住職大僧正竹村教智師を仰ぎ、第三十六世金蔵院兼務住職としてお迎えした。昭和四十年十二月垣内智洋は総本山智積院智山派管長より金蔵院第三十七世住職に拝命される。後に寺の整備も進む中、本堂の荘厳具の一つである天蓋が篤志家により奉納され、金堂にふさわしい内陣となる。又、昭和五十三年四月本堂屋根瓦葺替工 事が五十年振りに行われる。 これを機に梵鐘が奉納され、檀徒一同の協賛と法援を頂き鐘楼も完成する。 昭和五十八年より年次計画のもと、金蔵院 境内全般にわたる山容美化整備事業がすすめられ、金蔵院聖法寺公園の基礎がつくられる。事業は着々と進む中、聖法寺会(護持会)も設けられ 檀信徒の暖かいご法援を深く感謝するところである。